
今回のJAPAN SYORYは月をテーマにした昔話で竹の中から生まれたかぐや姫が月へ帰る『竹取物語』を楽しみたいと思います。
『竹取物語』は中秋の名月と深い関係があります。
物語では、かぐや姫が月の都へ帰るクライマックスの舞台が、旧暦の8月15日、2025年は、10月6日が中秋の名月の夜とされています。
月が満ちて「実る」様子と、かぐや姫が人間界で「実り」を経て月へ帰るという物語が重ね合わされているのです。

それは、千年の昔に語られた、
地上と月のあいだに浮かぶ、ひとつの愛のかたち。
竹の中から生まれたかぐや姫が月へ帰る『竹取物語』
ある夜、竹の中に光を見つけた。
それは、ただの光ではない。
小さな命が、そっとこちらを見ていた。
男はそれを抱きしめ、
妻はその名もない少女に愛を注いだ。
月日は流れ、
少女は“かぐや姫”と呼ばれるようになった。
その美しさは、
人の心を惑わせ、時の帝さえ動かした。
しかし姫の瞳の奥には、
決して満たされることのない
遠い空の寂しさがあった。
姫は、地上に生まれたのではない。
月の都から、たまたま降りてきた
ひとひらの夢のような存在だったのだ。
そして十五夜の晩、
天人たちが空を割って迎えに来たとき、
彼女はすべてに別れを告げ、
静かに空へと帰っていった。
人々が見上げたその月は、
どこか儚く、どこか優しかったのだ。

平安時代初期、『古今和歌集』(905年)以前には存在していた物語で「竹取の翁の物語」とも呼ばれていました。
「竹取物語」は、日本文学における「物語」というジャンルの出発点で、空想的・ファンタジー的要素を持ったスケールの大きなお話ですね。