今回のJAPAN STORYでは「酒呑童子」の続編「羅城門」の鬼伝説を呟きたいと思います。
「酒呑童子」を征伐したのが、源頼光の家臣「四天王」渡辺綱、卜部季武、碓井貞光、坂田金時の面々で、この四人が集まって酒を飲んでいた、ある暑い夏の夜のことです。京の都では、羅城門に、恐ろしい鬼が現れ、悪行の限りを尽くしているという、噂がひろがり、物語がはじまります。
「各々方、どう思われる」と貞光が言いました。
「鬼か、それはあり得ることじゃ」と季武と金時が頷きましたが、
これに反論したのが渡辺綱。「王地たる都城南門に鬼なぞ棲食うはずがない」と言い張ります。
ならば「確かめよ」との貞光の言に押され、綱が一人、都の南端にそびえる羅城門へと向かったのでした。
外はいつの間にか、生温かい雨が降り、城門に近づくにつれ、風雨が激しくなりました。
綱は羅城門に近づくと、しばらく楼門を見上げ、辺りに目をこらしましたが、誰もいません。
「源頼光家人 渡辺綱 約束の義によりて『羅城門』門前に確かに参上す」
約束の高札を羅城門の門前に打ち立てました。
その時、突如、背後から綱の兜を掴み取ろうとする者がいました。それが、目を爛々と輝かせて睨みをきかす奇怪な鬼です。
綱が幾度か激しく渡り合った後、ついに綱が鬼の腕をバサリと斬り落しました。
「むむっ、くそっ!綱よ、覚えておれ!その腕、七日の間に必ず取り戻しにいくからな!」
鬼はそう叫ぶと、空高く舞い上がっていきました。
切り落とした鬼の腕は、鋼の様なゴツゴツした太い腕で、針の様な毛が一面に生えていました。
その腕を仲間に見せると、「ほほう、これは凄い!綱、お主よくぞやったぞ」と仲間たちは口々に綱を褒め称えました。
しかし、綱はこの腕を七日間、鬼から守らなければなりません。綱は警護を厳重にして、鬼の腕を櫃(ひつ)に入れ、綱自身が四六時中これを見守りました。
そうして、何事もなく迎えた七日目の夜に、綱の叔母と称する老婆が門前を訪ねてきました。家来たちは老婆に聞くと、老婆は綱の叔母に当たるもので、はるばる綱を訪ねに来たとのことでした。
こうして老婆は、とうとう綱の屋敷の中へ入っていきました。
老婆が鬼の腕を見せてくれるよう所望すると、綱もつい心が緩んだのか、「叔母さん、これが鬼の腕です」
こうして綱が老婆に鬼の腕を差し出した、その時、突如老婆がそれを手に掴むや、「これは吾が手なれば取るぞよ」と叫び、老婆の顔は、あの恐ろしい鬼に変貌し、虚空へ飛び去ってしまったという話です。
羅城門のあるところは都のはずれ、権威の象徴としての城門の存在感も薄れ、城門が荒れ放題となったとしてもおかしくなく、鬼伝説として語られたのでしょうね。
写真・左は平安京羅城門復元10分の1サイズ模型
京都が平安京の時代、現在の千本通の辺りに幅80mのメインストリート・朱雀大路があり、その南端に平安京の表玄関として設けられたのがこの羅城門でした。